自殺対策概要
自殺対策とは
自殺対策は、社会における「生きることの阻害要因(自殺のリスク要因)」を減らし、「生きることの促進要因(自殺に対する保護要因)」を増やすことを通じて、社会全体の自殺リスクを低下させる方向で、「対人支援のレベル」、「地域連携のレベル」、「社会制度のレベル」、それぞれにおいて強力に、かつそれらを総合的に推進するものとされています(「自殺総合対策大綱」より)。そのためには、精神保健的な視点だけでなく、社会・経済的な視点を含む包括的な取組が重要であり、そうした「生きることの包括的な支援」を実施するためには、様々な分野の施策、人々や組織が密接に連携する必要があります。
我が国の自殺対策は「自殺対策基本法(2006年制定、2016年に改正)」に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱(2007年閣議決定、2022年改定)」を策定し、その下で自殺対策を総合的に推進しています。
自殺対策は「生きることの包括的支援」である
精神、社会・経済的視点を含む包括的支援で社会全体の自殺リスクを低下させる
世界保健機関(WHO)が「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」であると明言しているように、自殺は社会の努力で避けることのできる死であるというのが、世界の共通認識となっています。
自殺は、健康問題、経済・生活問題、人間関係の問題のほか、地域・職場の在り方の変化など様々な要因とその人の性格傾向、家族の状況、死生観などが複雑に関係しています。
そのうち、失業、倒産、多重債務、長時間労働等の社会的要因については、制度慣行の見直しや相談・支援体制の整備という社会的な取り組みにより解決が可能です。また、健康問題や家庭問題等一見個人の問題と思われる要因であっても、専門家への相談やうつ病等の治療について社会的な支援の手を差し伸べることにより解決できる場合もあります。
自殺は「その多くが追い込まれた末の死であり、その多くが防ぐことができる社会的な問題」であるとの基本認識の下、自殺対策を「生きることの包括的な支援」として、社会全体の自殺リスクを低下させるとともに、一人一人の生活を守るという姿勢で展開するものです。
生きることの阻害要因を減らし、促進要因を増やす
自殺は、個人においても社会においても、「生きることの促進要因(自殺に対する保護要因)」より「生きることの阻害要因(自殺のリスク要因)」が上回ったときにリスクが高くなるとされています。裏を返せば、「生きることの阻害要因」となる失業や多重債務、生活苦等を同じように抱えていても、全ての人や社会の自殺リスクが同様に高まるわけではありません。
「生きることの促進要因」となる自己肯定感や信頼できる人間関係、危機回避能力等と比較して、阻害要因が上回れば自殺リスクは高くなり、促進要因が上回れば自殺リスクは高まらないということです。
そのため、自殺対策は「生きることの阻害要因」を減らす取り組みに加えて、「生きることの促進要因」を増やす取り組みを行い、双方の取り組みを通じて自殺リスクを低下させる方向で、「生きることの包括的な支援」として推進する必要があります。
対人支援・地域連携・社会制度のレベルごとの対策を連動させる
自殺対策に係る個別の施策は、以下の3つのレベルに分けて考え、これらを有機的に連動させることで、総合的に推進するものとされています。
- 個々人の問題解決に取り組む相談支援を行う「対人支援のレベル」
- 問題を複合的に抱える人に対して包括的な支援を行うための関係機関等による実務連携などの「地域連携のレベル」
- 法律、大綱、計画等の枠組みの整備や修正に関わる「社会制度のレベル」
これは、住民の暮らしの場を原点としつつ、「様々な分野の対人支援を強化すること」と、「対人支援の強化等に必要な地域連携を促進すること」、更に「地域連携の促進等に必要な社会制度を整備すること」を一体的なものとして連動して行っていくという考え方(三階層自殺対策連動モデル)です。
このように自殺に追い込まれようとしている人が安心して生きられるようにして自殺を防ぐためには(=「生きることの包括的支援」を実施するためには)、様々な分野の施策、人々や組織が密接に連携する必要があります。
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