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【開催レポート】 第2回「自殺の表現」に関する映像・舞台関係者向け勉強会
≪前編≫  ~自殺や自傷に関連する企画・制作・表現を行う際に知っておきたいこと~

JSCPは2026年3月26日、「第2回『自殺の表現』に関する映像・舞台関係者向け勉強会~自殺や自傷に関連する企画・制作・表現を行う際に知っておきたいこと~」をオンラインで開催しました。JSCPでは、これまで報道関係者向けの勉強会を8回実施していますが、映画やドラマ、舞台などのフィクション作品も、描き方によっては自殺念慮がある方などに影響する可能性があるため、映像や舞台の関係者を対象とした勉強会を昨年に引き続き開催。自殺に関する表現を含む作品を企画・制作するのにあたり、どのような課題や留意点があるのか、関係者のみなさんと一緒に考える場にしようというものです。当日は映画会社やテレビ局などから約200人の方に参加いただきました。

 ■ 当日のプログラムはこちら

【前編】日本の自殺の概況と、ドラマが影響した自傷・自殺事例

自殺の概況 JSCP広報室長 三海 厚

まずJSCP広報室長の三海厚が日本の自殺の概況と自殺報道の影響などについて、自殺統計データなどを示しながら説明しました。

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日本の自殺者数の推移とウェルテル効果

日本の自殺者数は、1998年に急増し、初めて年間3万人を超えました。その後、3万人を超える状況が続いていましたが、2006年に自殺対策基本法が成立し、社会全体で自殺対策を進めていくようになる中、2010年から減少に転じました。ところがコロナ禍による社会不安が広がった2020年に再び自殺者数が増加。しばらく横ばいが続きましたが、2023年からはまた減少傾向にあります。今年1月に公表された2025年の暫定値では、自殺統計開始以来、初めて2万人を下回る1万9097人となりました。しかし、まだ毎年2万人もの方が亡くなっています。世界的に見ても日本の自殺死亡率は高く、深刻な状況に変わりありません。特にこども・若者の状況を見ると、G7の中で日本だけが、10~19歳の死因の1位が自殺になっています。近年、小中高生の自殺者数は増え続け、昨年の暫定値では532人と過去最多となりました。
自殺を考えている人は「生きたい」と「死にたい」の間で揺れ動いており、こうした状況の中にある人が自殺に関する報道やフィクションに触れることで自殺のリスクが高まる可能性(ウェルテル効果)があります。三海はこうした点について、日本でも著名人の自殺報道の直後に自殺死亡者数が増えていたこと、また自殺を報じられた人の属性に近い人がより強い影響を受けやすい可能性があることなどを説明しました。

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※「第5回自殺報道のあり方を考える勉強会」で、国内の「ウェルテル効果」についてより詳しく紹介しています。

JSCPのメディア向け取り組みについて

そのうえで、JSCPがメディア関係者を自殺対策における重要なパートナーと位置づけ、WHOが発行している自殺報道ガイドラインの翻訳・周知を行っていることや、「自殺報道のあり方を考える勉強会」を開催していることなども紹介。最後に、「ガイドラインはあるが100%の正解はなく、表現の自由との狭間で、どうバランスを取ればいいのかをみなさんと一緒に考えていければ」と話しました。

WHOガイドライン 研究と作品事例紹介 JSCP広報室 伊江昌子

続いて、JSCP広報室の伊江昌子が、WHOが発行している映像制作者などに向けたガイドラインと、映像作品が自殺者数に影響を与えたとされる研究事例を紹介しました。

自殺対策を推進するために 映画制作者と舞台・映像関係者に知ってもらいたい基礎知識」とは

WHOが2019年に公表した映画制作者、舞台・映像関係者向けのガイドラインは、2020年に日本語訳が厚生労働省のウェブサイトに掲載されました。ガイドラインのねらいには、「映画制作者および映像・舞台作品の企画・制作関係者向けに情報を提供して、映像や舞台で自殺を描写する場合は必ず正確かつ適切に行うようにし、また、自殺描写が与える好ましい影響を最大化しつつ、悪い影響をすべて最小化すること」と記されています。
ガイドラインでは、12のポイントが掲げられ、「自殺の行為や手段に関する描写を避けること」「自殺の描写が舞台や映画制作に関わるものに与える影響を考慮すること」などが示されています。

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ドラマが自殺者数や自殺未遂者数の増加に影響したとみられる研究事例

このうち、「自殺の行為や手段に関する描写を避けること」について次の事例を紹介。

①医療テレビドラマ“Casualty”(英国)によるとみられる薬物過剰摂取の影響
②Netflix配信連続ドラマ“13 Reasons Why” 『13の理由』(米国)と関連するとみられる死亡者数増加

特に②『13の理由』では、配信開始後の1か月間に米国の10歳から17歳までの若者の自殺死亡率が28.9%増加し、9か月間で195件の自殺死亡者数の超過が推計されることが米国国立精神衛生研究所(NIMH)から報告されています。
そうしたなかで、Netflixと制作チームが対応策をとり、当初3分間挿入されていた登場人物の自殺シーンをカットしたほか、ドラマの冒頭に俳優たちが「このドラマには自殺や性的な表現が含まれている」「信頼できる大人と見て欲しい」といったメッセージや、相談先情報を伝える映像が必ず流れるようにしています。



出演者や現場制作者にリスクがある可能性とは?

「自殺の描写が舞台や映画制作に関わるものに与える影響を考慮すること」としては、観客のみならず多くの出演者・関係者がいる制作現場の特性を説明。

  • 若者やうつ状態の人はリスクが高く、自殺描写を見た後で自殺したいと思ったり、実際に行動に移したりすることがある
  • 自殺未遂経験者、自死遺族等、虐待の被害者やLGBTQの方々も自殺リスクが高いグループである

という研究結果を紹介し、舞台や映像をつくるスタッフや出演者のなかにも当事者がいる可能性があり、制作の過程で繰り返し自殺シーンに触れることによりネガティブな影響を受けかねないことを指摘しました。


【後編】NHKプロデューサーが登壇 ドラマ『お別れホスピタル』自殺関連表現で配慮したこと