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職員インタビュー 自殺総合対策部長・半谷まゆみ:自殺問題に無関心だった自分 反省をバネに対策広げたい

2024年10月 7日

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<プロフィール>半谷 まゆみ(はんがい・まゆみ)

神奈川県出身。2010年医学部卒。小児科専門医・指導医、医学博士。大学病院や市中病院で臨床医として研鑽を積み、2018年に公衆衛生学修士を取得。前職国立成育医療研究センターでは、コロナ禍におけるこどものメンタルヘルスに関する研究及び啓発活動などに従事。
​​​​​​​2021年12月に特任研究員としてJSCPに入職し、2022年4月より子ども・若者自殺対策室(現こども・若者自殺対策室)長、2023年4月より現職(こども・若者自殺対策室長を兼任)。米国在住、2児の母。座右の銘は、"Where there is a will, there is a way."(意志あるところに道は開ける)。短所は空気を読めないところ、長所は空気を読まないところ (?)。



――自殺総合対策部の概要と役割について、教えてください。

半谷)自殺総合対策部では、誰も自殺に追い込まれることのない「生き心地のよい社会」を創る、というJSCPならびに日本の自殺対策のビジョンを達成するために、「生きることの包括的支援」として、自殺対策を幅広く総合的に推進することをミッションとしています。

「自殺未遂者支援室」「こども・若者自殺対策室」「自死遺族等支援室」「国際連携室」の4室で構成され、調査研究推進部や地域連携推進部とも密に連携しながら上述のミッションを遂行しています。

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――自殺総合対策部の特徴は?

半谷)当部では、医師、研究者、教員、行政や民間企業出身者、自死遺族等支援の専門家など、多彩なバックグラウンドを持つメンバーが、それぞれの知識・経験・スキルを持ち寄って、お互いを尊重しながら自殺対策推進のために取り組んでいます。この多様性が当部の特徴であり、強みです。室内、室間、他部署との連携のハードルをなるべく下げて、各事業の効率化や発展を目指しています。各室の業務におさまりきらないような事業、たとえば啓発プロジェクトなどは、部室の垣根を越えてチームを結成し、活動しています。

――JSCPで働く前は、何をしていましたか? 自殺対策に関わるきっかけは?

半谷)振り返ってみると、最初にこどものこころに関心を持ったのは、中高生時代に親しかった友人が自傷行為をしていると知ったことでした。友人のことを理解したい、何か自分にできることはないか、と当時の自分なりに精一杯寄り添いました。ただ、今思うと、もっと適切な対応があったかなと思う部分もあります。小児科医になり、医療を通して、外来や入院中のこどもたちの成長をみてきました。この間も、こどものこころにずっと関心を持ち続けていました。

国立成育医療研究センターの研究員だった時、新型コロナウイルスの感染が拡大し、研究を在宅で行わねばならなくなりました。我が家には当時未就学のこどもが2人いて、こどもの面倒をみながら仕事をする中で「このままでは、虐待してしまうのではないか」と思うほど追いつめられていきました。「こんな思いをしているのは私だけじゃないのでは?」との思いから、センターの仲間に呼びかけて「コロナ×こども本部」を立ち上げ、こどもと親を対象にしたアンケート調査を通してコロナ禍がこどもに与える影響を調べました。
アンケート結果で衝撃を受けたのは、小学校1年生の女の子が自由記述欄に「死にたい」と回答していたことです。こんなに小さな子が「死にたい」と思ってしまう社会に強い危機感を覚えていた時、JSCPでこどもの自殺対策に携わる人材を募集している求人を偶然見つけ、「今、これをやるしかない」と思って応募しました。

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――自殺対策への思いや、今後取り組みたいことは?

半谷)ここまでにお話ししたように、私はJSCPに入職するまで、自殺対策に関わった経験がありませんでした。研修医時代、次々に急患が運び込まれる状況の中、自殺未遂で救急搬送されてくる患者さんに対して「医療のリソースも限られている中で、勘弁してほしいな」と感じたことが、正直言ってあったのです。でも、JSCPに入職して「死にたい」気持ちを抱えた方の心情や背景、自殺は「追い込まれた末の死」「個人の問題ではなく社会の問題」であることなどを知り、当時の自分の考えを恥ずかしく思いました。同時に、自殺対策に関する知識や情報の不足により、当時の自分のように思ってしまう医療関係者らは少なくないのではないか、とも感じました。これは、かつて「自殺対策に関心のない人間・医療者」だったからこそ気づくことができた課題でもあるので、この反省を忘れず逆にバネとし、自殺対策、自殺に関する誤解や偏見の払拭にも取り組んでいきたいと思っています。

自殺対策としてやらねばならないことがたくさんある中で、JSCPだけでできることは限られています。しかし、様々な機関や分野と連携し仲間を増やすことで、やれることを増やしていけるという実感があります。具体的には、自殺総合対策部のほとんどのプロジェクトで厚生労働省をはじめとする関係省庁と連携しているほか、医学関連学会等との共催や後援による各種研修の開催、多分野の専門家に助言を仰ぎながらの調査研究やガイドラインの策定、国際学会や世界各国の自殺対策専門家との連携を通して世界の自殺対策への貢献などを行っています。

こうした連携により、実効性のある自殺対策のアイデアやエビデンスが生まれるはずで、その先に必ず「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現があると信じています。



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