啓発・提言等

【開催レポート】第7回 自殺報道のあり方を考える勉強会 ~基礎から分かる!報道で「するべきこと」とは?~

2024年8月 2日

JSCP2024年7月18日(木)13時半~14時半、「第7回 自殺報道のあり方を考える勉強会」をオンラインで開催しました。

■プレスリリースは、こちら

過去6回の勉強会はいずれも、休日に約2時間のプログラムで開催してきましたが、今回は初めて、平日に1時間のプログラムで実施しました。

「基礎から分かる!報道で『するべきこと』とは?」とのテーマを掲げ、自殺報道について基本から分かりやすく解説するコンテンツを1時間に凝縮してお伝えする内容としました。
その結果、報道現場の記者やディレクターの方々に加え、管理部門などからも多くのご参加をいただきました。また、8割以上が「初参加」で、6割近くが「地方局」もしくは「地方紙」からの参加となるなど、自殺報道について全国のメディア関係者に幅広く知っていただく機会となりました。

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自殺に関する基礎知識 ー日本の自殺の概況ー

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勉強会ではまず、JSCP代表理事の清水康之が日本の自殺の概況について説明しました。その上で、「自殺報道に100%の正解はなく、WHO自殺報道ガイドラインに書いてあることを、すべて守らなければいけないということではない。ガイドラインを踏まえ、それぞれの現場での判断が当然行われるべきと考えている。正解がない自殺報道について、皆さんと共に迷ったり悩んだりしながら考えていきたい。今日を、まさにそういう場にしたいと思っている」と述べました。


データで解説 近年の自殺報道の影響 ―「ウェルテル効果」は、いつ起きたのか

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続いて、JSCP分析官の谷貝祐介が「データで解説 近年の自殺報道の影響 ―『ウェルテル効果』は、いつ起きたのか」と題して発表しました。自殺に関する統計に基づき、年間でみると3月に自殺者数が最も多く、週間でみると休み明けの月曜日に自殺者数が増える傾向があることなどを説明しました。また、2020年以降の有名人の自殺報道の影響に関する分析結果を紹介し、2020年7月と9月および2022年5月の有名人の自殺報道の直後にウェルテル効果が確認されたとの分析結果などを紹介しました。

加えて、ウェルテル効果には、①自殺者数は報道直後から増加して数日後にピークとなること、②亡くなった有名人と属性が近い人が影響を受けやすいこと、③自殺者数の増加はすぐには収まらないこと、④土日や長期休み明けに特に影響が大きくなりがちなこと、などの特徴があることを、最新の分析結果から解説しました。

さらに、昨年7月の有名タレントの自殺報道後にはウェルテル効果が確認されなかったことについて、それ以前の報道に比べて自殺の「手段」を伝える報道の数が減ったことを示唆するデータを提示し、「報道内容の質的な変化が、その後の反響と自殺者数の抑止に貢献している可能性がある」と解説しました。


自殺手段の報道がもたらす影響とは? ―日本と海外の事例・研究から

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続いて、JSCPセンター長補佐で医師の反町吉秀が「自殺手段の報道がもたらす影響とは? ―日本と海外の事例・研究から」と題して講演しました。反町は、監察医として有名人の自殺報道直後に模倣自殺とみられる事案を担当した経験や、日本や香港、オーストリアなどの研究・事例を基に、「手段」を詳細に伝えることのリスクを解説しました。その上で、「自殺念慮を持つ人にはそれぞれ親和性がある自殺手段があり、特定の手段が制限された場合に、別の手段を用いる可能性は少ない」などと説明しました。


WHO自殺報道ガイドライン 「するべきこと」「してはいけないこと」

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最後の発表は、JSCP広報室長の山寺香がWHO自殺報道ガイドライン(2023年版)の概要について説明しました。同ガイドラインの「クイック・レファレンスガイド」に掲載されている「するべきこと」(6項目)と「してはいけないこと」(8項目)を紹介し、そのポイントについて説明しました。

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質疑応答

その後の「質疑応答」では、参加者からの「記事や放送の中で相談窓口に関する情報を伝えても、窓口がパンク状態で繋がらないと聞く。相談窓口を案内するだけで、本当によいのか?」、「自殺の『場所』を詳報してはいけないのはなぜか?」などの質問に、登壇者が回答しました。


アンケート結果

終了後のアンケートには107名から回答があり(回答率53.3%)、勉強会の満足度については、99%が「満足」または「やや満足」と答えました。
自由記述の回答では「日々の報道の中でなぜマスコミが自殺に関する報道に十分配慮しなければならないのかが、裏付けとともに具体的に理解できた」、「著名人の自殺報道が自殺念慮者の背中を押すことは知っていたが、それを理論的に学ぶことができた」、「前回の講座で学んだことを復習、アップデートできた」などの感想が寄せられました。


JSCPでは今後も、定期的に「自殺報道のあり方を考える勉強会」を開催し、メディアの方々と共に自殺報道について考える場を設けていきたいと考えています。


■過去6回の「自殺報道のあり方を考える勉強会」の詳細レポートは、こちら