研修・会議

【開催レポート】令和6年度第2回「生きることの包括的支援のための基礎研修」

2025年4月 7日

JSCP2025年3月14日、令和6年度第2回「生きることの包括的支援のための基礎研修」をオンラインで開催しました。この研修は、都道府県・市区町村(政令指定都市含む)の自殺対策担当者・関係者が、地域において「生きることの包括的支援」としての自殺対策を推進するべく、事業企画の立案や支援技術の理解に役立てることを目的として、年度内にテーマ別で複数回にわたり開催するものです。

今回の研修では、東京都江戸川区が、2024年9月に調査分析のうえ公表した「自殺で亡くなった住民との関わりに関する分析結果と対策」について、江戸川区健康部副参事の大澤樹里氏に講演いただくとともに、JSCPセンター長補佐の森口和が本調査事業に協力を行った立場から説明。当日は全国の都道府県や市区町村等の自殺対策担当者、約300人が参加しました。

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江戸川区健康部副参事の大澤樹里氏
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JSCPセンター長補佐の森口和


江戸川区では、2014年に自殺対策の専門部署として「いのちの支援係」を設置するとともに、区長をトップとして各関係部署の管理職者が集まる「自殺対策戦略会議」を定期的に開催するなど、全庁を挙げて自殺対策に取り組んでいます。そうした中、今回の調査分析に着手した背景として大澤氏からは、▽自殺対策戦略会議において区長から出された「各部署における自殺対策事業の達成度が8割超となっているのに、なぜ自殺者数は減らないのか」との問題提起を受け、実態把握に向けた調査を実施することになったこと、▽実施にあたっては情報の取り扱い等に留意するとともに、各関係部署の管理職者を中心に丁寧な説明を行い全庁からの理解と協力を得たこと、▽調査データの分析結果については各課に対して詳しくフィードバックを行うとともに、フィードバックを踏まえて各課からも今後の対応策等につき意見を得られたこと――などが説明されました。最後に大澤氏は、調査の実施を通じて各職員の自殺対策への意識が向上するなど関係部署との連携強化につながったことや、管理監督者を対象にした研修を通じて自殺対策の理念があらためて共有されたことなどを調査の成果として挙げた一方、「今後は支援者を支援できるような体制の拡充が課題」と述べました。

大澤氏の講演に続き、森口からは、本調査事業に協力した立場として、今後の対策推進のために実施するという調査の目的を関係者間で共有することの重要性や、調査時のデータの取り扱い方法、調査対象となる各職員への心理的配慮が必要であることなど、調査を実施する際のポイントや留意点につき、チェックリストや各種参考資料などを示しながら説明を行いました。

 

説明後の質疑応答では、小規模自治体において調査を実施する際や、他部署からの相談への対応についての質問のほか、調査の結果を今後の施策につなげていく際のポイントなど、様々な質問が寄せられました。質疑応答の最後に大澤氏は、「住民の生命と財産を守ることが、自治体としての何より果たすべき使命。自殺対策の取り組みを進めてもすぐに自殺者数の減少につながるとは限らないが、この使命のもと、全庁を挙げて今後も生きる支援に取り組んでいきたい」と述べました。

研修後のアンケートには、「庁内で実施できるモデル的な取り組みを示していただき、大変参考になった」「庁内各課への調査は、全庁的に自殺対策を行うための意識向上の方法の一つとして、大変有効と感じた」「調査の丁寧さ、全庁的な取り組みを目指すための対応など、今後の事業推進を考える上で大変参考となった」「住民に深くかかわる行政ができることとして、自分たちのことを振り返る視点と行動の具体が分かった」などの感想や意見が寄せられています。

JSCPでは、今後も各種研修を通じて、地域における自殺対策の推進を支援していきます。