職員紹介
【職員インタビュー】自殺未遂者支援室室長補佐
岩間雄大:「活動の先にある存在を強く意識する」ことで、踏ん張れる
2025年7月 7日
〈プロフィール〉岩間 雄大(いわま・ゆうだい)
1995年、新潟県生まれ。2018年より富山大学大学院の生理学の教室にて、光トポグラフィーや脳波等によるヒト脳機能研究に従事。社会福祉士、博士(医学)。在学中、自殺対策に取り組むNPO法人に相談支援 やデータ分析担当として参画。2024年4月よりJSCP分析官、2025年4月より自殺未遂者支援室室長補佐。
—— 2025年6月10日~13日にオーストリア・ウィーンで開催された「第33回国際自殺予防学会(IASP)国際大会」で、自傷・自殺未遂レジストリ(症例登録システム)に関するデータ分析の結果を発表しました。学会に参加した感想を聞かせてください。
岩間)自殺対策関連の国際学会に参加したのは初めての経験でしたが、統計的なデータの共有だけでなく支援の最前線に立つ方々の取り組みの紹介、特にデジタル技術を導入したリスク検知や危機介入の取り組みが興味深かったです。自殺未遂者等へは継続的な支援が必要ですが、人の力だけでは難しいこともあります。デジタル技術の活用も交えた取り組みも模索していく必要があると感じました。
研究・分析結果だけでは、それを自殺対策の現場でどう生かしていくか、すぐにイメージができません。しかし、現場での取り組みついても報告されることで、研究と実践を結びつけて考えることができました。
—— 学会で、印象に残っていることは?
岩間)世界保健機関(WHO)が各国に対し自傷・自殺未遂レジストリの構築を推奨していることもあり、レジストリに対する各国関係者の熱量が非常に高いことを肌で感じられたことです。各国の発表を通し、国は違ってもデータ分析や倫理的配慮に関する課題は共通していることがわかりました。そしてワークショップでは、それらの課題について、既にレジストリがある国の参加者も、まだない国の参加者も一緒になって、積極的に意見を交わすことができました。
—— JSCPに入る前は、どんなことをしていましたか?
岩間)福祉関連の施設で働きながら大学院の博士課程に通い、生理学の研究室でヒトの脳機能を解析する研究をしていました。自殺対策とは直接関係のない研究でしたが、同じ研究室の先輩が自殺対策にも関わっていて、その方のお話を聞く中で自殺対策に関心を持つようになりました。
その頃、自殺対策のNPO法人でスタッフ を募集していることを知り、応募してみることにしました。そこで採用されたのが、自殺対策との関わりのスタートでした。その後の2024年4月に分析官として、JSCPに入職しました。
—— 自殺対策のどのようなところに関心を持ちましたか?
岩間)「生き心地のよい社会を創る」という自殺対策の理念に惹かれました。「生き心地のよい社会」とはどういうことかと考えてみたとき、自分の中では安心して過ごすことができる社会、困った時に取り残されない、「困った時はお互い様」な社会を思い浮かべました。
人は誰しも追い込まれる可能性がありますが、逆に自分が元気な時には、困った人の力になることもできます 。私には「自分が生きている世の中は、そんな風に安心して暮らせる社会であってほしい」という思いがあり、自らその実現に関わることができる自殺対策に魅力を感じました。
—— JSCPでは、どんな仕事をしていますか?
岩間)2025年4月から自殺未遂者支援室の室長補佐となり、主に自傷・自殺未遂レジストリの運営に携わっています。レジストリから得られた知見を、個々の医療機関での未遂者等への支援や、支援の社会的枠組みづくりに還元することを目指しています。データの分析や、参加する医療機関からの問い合わせへの対応、システムの維持・改修など、レジストリを安定的に運営することに注力しています。
また、2024年度は分析官として「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」(令和6年度こども家庭庁補助事業)プロジェクトのメンバーとして、主に民間団体に寄せられたチャット相談の記録や掲示板データの分析を担当しました。
効果的な対策を考える上で、現状をしっかり分析して把握することがとても重要です。今後はさらに、その分析結果を現場での対策にどう生かすか、というところまで関わっていきたいです。
—— 自殺対策への思いを聞かせてください。
岩間)「活動の先にある存在を強く意識する」ことが、私が自殺対策に取り組む上で指針となっています。例えば、自殺未遂者支援に関する業務の先には、自殺未遂を経験された方や死にたいくらいつらい気持ちを抱えた方たちがいます。そうした一人ひとりの存在を常に意識しながら取り組むことで、「今の自分の力では、ちょっと難しいかな…」と思うような場面でも、仲間の力も借りながら、踏ん張ることができるのではないかと考えています。
■職員インタビューのバックナンバーは、こちら