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職員インタビュー② 地域連携推進部長 小牧奈津子:「社会は変えられる」自殺対策を通して伝えたい

2024年9月 4日

【プロフィール写真】DSC00367_レタッチ済み.JPG<プロフィール>小牧 奈津子(こまき・なつこ)

神奈川県出身。大学院で公共政策学の視点から自殺対策についての調査研究を行い、調査の一環で、地方公共団体の非常勤職員として地域の自殺対策事業に従事した経験もある。2017年に博士の学位を取得。その後はNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」職員として、主に地方公共団体における地域自殺対策計画の策定支援や「自殺のない社会づくり市区町村会」の運営等に携わってきた。2020年4月よりJSCPに在職、自殺対策政策室長や地域支援室長などを務め、2023年4月より現職。主な著書に「『自殺対策』の政策学 個人の問題から政策課題へ」(ミネルヴァ書房、2019年)がある。





──地域連携推進部の概要と役割を教えてください。画像1.png

小牧)私たち地域連携推進部は、住民のいのちと暮らしを守る現場である地方公共団体において、自殺総合対策大綱やこどもの自殺対策緊急強化プランなどを踏まえつつ、自殺対策の取り組みが効果的かつ効率的に進むよう、JSCPの各部署や関係各省庁等と連携しながら、地方公共団体への支援を行っています。

私たちが地域への支援を行う際の直接的なパートナーとなるのが、全国の都道府県・政令指定都市に設置されている、地域自殺対策推進センター(以下、地域センター)です。自殺対策のエリアマネージャーとしての役割を担う地域センターへの支援を通じて、各地域における自殺対策の推進へとつなげていくことで、誰がどこに住んでいても必要な時に必要な支援を受けられる、自殺に追い込まれることのない地域づくりの推進を目指しています。

――地域連携推進部の取り組みの特徴は?

小牧)地域連携推進部では、地域センター以外にも市町村等からのお問い合わせやご相談に対応できるよう、全国を5つのブロックに分けたうえで、ブロック別に「自治体コンシェルジュ」という相談窓口を常設しています。コンシェルジュ宛に寄せられたご意見やお問い合わせには、各ブロックに配置されている地域支援室長が窓口となり対応します。この情報は、地方公共団体が今どのような課題に直面しているかを把握し、必要な支援を検討する上で、とても貴重な情報源にもなっています。

地方公共団体から日々寄せられるご意見やご相談は本当に多岐にわたりますが、地域連携推進部には、地方公共団体職員として自殺対策や学校教育、生活困窮者支援等に長年携わってきた職員のほか、NPO団体の出身者、元官庁職員、自死遺族等支援の専門家など、多種多様な背景を持った職員がいます。それぞれの専門性を生かしながら連携することで、地方公共団体を包括的にサポートできるのが大きな特徴です。地方公共団体の皆さんにとって安心して、気軽に相談できる存在でありたいと思っています。

【インタビューカット・左向】photo-komaki-08_レタッチ済.jpg

──自殺対策に関わるきっかけは?

小牧)「よく生きるとはどういうこと?」「よく生きるにはどうしたらよいか?」といったことに幼いころから関心がありました。大学院に進学して論文のテーマを設定する際、指導教授から「自殺の問題を扱ってみては?」と言われたのをきっかけに、自殺の問題に関心を持つようになりました。当時はアラビヤ語とイスラームについて学んでおり、イスラーム教徒の自殺死亡率が低いことが世界的にも知られていたので、彼らの自殺を抑制する要因について調査し、修士論文としてまとめました。

その後、博士課程で研究を進める中で、日本の自殺の問題、特に公共政策としての自殺対策に関心を持つようになり、「個人の問題」とされていた自殺の問題が政策課題となっていったプロセスについて調査を行い、博士論文としてまとめました。

──地域での自殺対策に関わった経験は?

小牧)博士課程在学中の2011年から、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」で学生インターンをしていたのですが、そのご縁で2012年から2年間、足立区の会計年度任用職員として自殺対策に関わらせていただけることになりました。当時の課長から、行政が自殺対策に取り組むことの意味を教えてもらいました。地域における自殺対策とは、すなわち「住民のいのちと暮らしを守ること」であり、「それができるのが行政なのだ」と身をもって知ったことが、私にとって地域支援に取り組む原体験になっています。その後、学位を取得した後に2017年からはライフリンクの職員となり、同年から1年間、江戸川区の地域自殺対策計画の策定にも携わりました。これらの経験が、今の職務に生きていると感じています。

JSCPは自殺対策の現場から少し離れたところにあります。だからこそ、地域の現場で取り組みを進める地方公共団体の皆さんとの関わりが非常に重要です。現場で生じている様々な課題や困りごとを教えていただき、それをもとに改善策を考え、現場の取り組みに還元していくことが、一人一人のいのちと暮らしを守ることにつながっていく。そのことを常に忘れてはいけないと思っています。

【インタビューカット・右向】photo-komaki-03_レタッチ済.jpg──自殺対策への思いは?

小牧)もともとは、政策に対して関心を持てずにいました。なぜなら政策とは「永田町(政治家)と霞が関(官僚)で行われていること」「自分には関係ない」というイメージを持っていたからです。しかし、大学院時代に自殺対策の政策過程を知る中で、「政策には市民がかかわることのできる余地がたくさんあり、一人一人が関心を持ってかかわっていくことで、社会を変えられる」と感じました。「私も社会を変えられるかもしれない」。そう思った時、ものすごいインパクトと可能性を感じました。

私には未就学のこどもがおり、こどもたちが成長する中で「日本っていいな」と思える社会にしていきたいという思いが強くあります。自殺対策の取り組みを通して、「私たちも、社会を変えられる」「私たちが社会をつくるんだ」というメッセージを伝えたいです。「生きづらい」と思うことがあっても、「ならば仲間と一緒にその社会を変えていこう」「自分もやってみよう」と思える、そんな社会を作っていきたいです。



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