調査・研究等

「令和3年度革新的自殺研究推進プログラム 自殺対策推進レアール(委託研究成果報告会)」を開催しました

2022年6月 6日

いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)は令和4年5月16日(月)、令和3年度革新的自殺研究推進プログラム自殺対策推進レアール(委託研究成果報告会)をオンラインで開催しました。委託研究3領域8課題の研究代表者および研究分担者(代理発表者)がそれぞれの研究成果を報告し、各領域ごとに座長であるプログラムディレクターの進行のもと参加者からの質問も受け付け、議論を深めました。
革新的自殺研究推進プログラムは、自殺総合対策大綱に明記された研究事業であり、平成29年度に創設された、官民横断型の自殺対策に関する総合的な研究プログラムです。(革新的自殺研究推進プログラムの詳細については、こちらをご覧ください)
4回目の開催である今回は、研究成果をより広く還元し地域での自殺対策の実践に生かしていくため、委託研究の関係者だけでなく、限定的ではあるものの、自殺対策の現場を担う地方自治体の自殺対策担当者や自殺対策関連学会に所属する方々に対して初めて参加者を募りました。その結果、自治体関係者約60人を含む計約110人の方にご参加いただきました。

会議の冒頭でJSCP代表理事の清水康之が「今回のレアールをきっかけに、自治体・地域の自殺対策の最前線で活動されている方々に、自殺対策研究の最前線の取り組みを広く知っていただき、研究と実務の連動性を高めていく一歩につなげたい。ご発表いただく研究者の皆様にも、研究成果が現場での実践につながるよう、現場の方々に分かりやすいかみ砕いたご説明をいただけたら大変ありがたい」と挨拶しました。続いて、厚生労働省の髙橋俊博大臣官房参事官(自殺対策担当)から、「自殺の要因については多様で複合的であることから、様々な分野の取り組みが欠かせない。多様な観点から進められている革新的自殺研究推進プログラムの研究が、本日のレアールで一層研究内容が深まり、今後の対策に結びついて国民の皆様に還元できる研究となっていくものと期待している」とご挨拶をいただきました。

会議では、3つの領域(領域1:自殺対策に関するエビデンスの確立、領域2:地方自治体の支援ツールの改善、領域3:新たな政策領域の開拓)ごとに、課題別の研究成果の報告(代表発表者からの発表20分、質疑応答10分の計30分)と、全体討議(15分)が行われました。

質疑応答や討議では、自殺対策、自殺研究の多岐にわたる課題について議論が展開されました。地域における自殺対策の制度設計に関しての議論では、個々人の自殺リスクを下げるために、かかりつけ医の役割、救急における精神科との連携、それを支える行政や社会的資源との連携の重要性が指摘されました。また、自殺対策研究の成果を地域に還元することの重要性を指摘する意見、「自治体等の政策現場の声・ニーズを聞くことで、研究者が次なる研究課題の発見につなげられる」といった発表者の声もあり、自治体と研究者の連携の意義・重要性についても議論が及びました。さらには「新型コロナウイルス感染症の患者データと自殺データの連携といった自殺対策に資する研究・データ構築を推進する上で、研究成果の還元が国民のコンセンサスを醸成する」といった課題も示されました。
会全体では、休憩時間を含めて6時間を超える長丁場となりましたが、自治体関係者らからの質問や意見も複数寄せられ、最後まで活発な議論や意見交換がなされました。

最後に、JSCP調査研究推進部部長代理の髙橋義明が、「『レアール』という言葉はフランス語で中央市場(Les Halles)を意味し、レアールという会議の命名には、研究で得られた成果物を中央市場に持ち寄り情報共有し、さらに次のステップを進めていくという意図がある。革新的自殺研究推進プログラムの研究成果は、究極的には自治体や関連団体などの活動への社会実装ができてこそであり、今回のレアールが研究者と自治体等関係者とのハブとなるきっかけになればと考えている」と閉会の挨拶をし、引き続きのご支援・ご協力をお願いしました。

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JSCP代表理事の清水康之(左)とJSCP調査研究推進部部長代理の髙橋義明(右)


■令和3年度 革新的自殺研究推進プログラム 委託研究一覧■

【領域1】自殺対策に関するエビデンスの確立

課題番号・研究課題名 研究代表者・所属・役職
1-1 多世代共生型地域包括ケアに向けたソーシャル・キャピタル醸成プログラムの開発 藤原 佳典 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム 研究部長
1-2 DPCデータによる我が国の自殺の現状に関する研究 松田 晋哉 産業医科大学 医学部公衆衛生学教室 教授
1-3 自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐための救急医療における自傷・自殺未遂レジストリの構築 三宅 康史 帝京大学 医学部付属病院高度救命救急センター長 医学部救急医学講座 教授


【領域2】地方自治体の支援ツールの改善

課題番号・研究課題名 研究代表者・所属・役職
2-1 行政における統計データの利活用の推進に関する研究 椿 広計 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 名誉教授
2-2 妊産婦から子ども・若者に至るライフステージの総合的自殺対策に関する研究 藤原 武男 国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学分野 教授
2-3 新型コロナウイルス感染症流行下における大都市部の自殺実態解明に関する新たな手法の開発 木津喜 雅 国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 東京都地域医療政策学講座 准教授


【領域3】新たな政策領域の開拓

課題番号・研究課題名 研究代表者・所属・役職
3-1 ソーシャルメディアを活用した自殺対策に関する研究 島津 明人 慶應義塾大学 総合政策学部 教授
3-2 災害・児童虐待等のトラウマ体験を有する人の心のケア支援の充実・改善に関する研究 金 吉晴 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 所長