調査・研究等

国際自殺予防学会(International Association for Suicide Prevention, 略称 IASP)の第32回国際大会に参加

2023年10月 5日

国際自殺予防学会(International Association for Suicide Prevention, IASP)の第32回国際大会が、2023年9月19日から23日にスロベニアにて開催されました。世界各国から自殺対策に携わる研究者、実務家などが参加し、口頭発表、ポスター発表を含む、計700以上の発表が行われました。

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JSCPからは3名が出席し、調査研究推進部・分析官の新井崇弘と、子ども・若者自殺対策室・分析官の田辺季実子が発表を行いました。また、JSCP代表理事の清水康之と分析官の新井が、優れた功績を残した実務家や若手研究者に贈られるIASP賞を受賞し、スピーチを行いました。 

■学会の概要、および、全ての発表のアブストラクト(要約)は、IASPの公式サイトからご覧いただけます



photo-IASP2023_03.jpg分析官の新井は「自殺とメディア、インターネット(Suicide, media and the internet)」のセッションで、「自殺報道による即時的および長期的な影響」と題した口頭発表を行いました。
このセッションでは他に、オーストリア、オランダなどの国から、自殺目的でインターネットやチャットサービスを利用するユーザーに対してリスクを減らす方策、テロ攻撃に関するセンセーショナルなメディア報道の影響についての演題が発表されました。新井の発表について、フロアからは、ウェルテル効果(自殺報道の影響で自殺者数が増加する現象)が影響を及ぼす期間や、自殺手段の報道が模倣自殺にどの程度影響しているかについてコメントや質問が寄せられました。


photo-IASP2023_04.jpg分析官の田辺は、「子ども・若者の自殺関連行動(Suicidal behaviors in children and adolescents)」のセッションで、「在籍課程に着目した高校生の自殺の傾向」について口頭発表を行いました。
このセッションでは他に、若者の自殺念慮からの回復要因や、「死にたい」気持ちを抱える友達を支えるピアサポートに関する研究結果が発表され、子ども・若者の自殺対策に関わる研究者や実務者の間で活発な議論が交わされました。


また、大会初日のウェルカムディナーにおいて各IASP賞の授賞式があり、新井がアンドレイ・マルシッチ(Andrej Marušič)賞を受賞しました。この賞は、スロベニア出身の精神科医であるアンドレイ・マルシッチ氏を記念して作られ、自殺関連行動とその予防に関する研究を行う若手研究者に贈られる賞です。新井は受賞スピーチで、メディアと自殺との関連に特に関心を持っていることを述べ、会場からは温かい拍手が送られました。

最終日の閉会式では、清水がリンゲル賞を受賞し、JSCPから2人目の受賞が報告されました。リンゲル賞はエビデンスに基づいた自殺予防プログラムやプロジェクトの開発と実施に10年間以上携わってきた実務家に贈られる賞で、IASPの初代会長であるエルヴィン・リンゲル教授を称え、1995年から続く、大変名誉ある賞です。1997年には「いのちの電話」の創設者である斎藤友紀雄氏もこの賞を受賞しており、日本人で歴代2人目の受賞となりました。受賞にあたり、清水はビデオメッセージで自殺対策への想いを語り、ホールに集まった参加者からは大きな拍手が送られました。

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2年おきに開催されているIASP国際大会ですが、各発表においては貴重な情報交換の場となり、発表の合間にも各国からの参加者同士が交流し、活発に意見交換が行われていました。次回の国際大会は2025年、オーストリア・ウィーンでの開催が予定されています。