研修・会議

令和4年度「地域における自殺未遂者支援事業研修」開催レポート医療機関と自治体の連携による自殺未遂者支援の基盤強化を目指して

JSCPは令和4125日(月)1330分~1630分、「地域における自殺未遂者支援事業研修」をオンラインで開催しました。
本研修は、「救急患者精神科継続支援料算定医療機関」と自治体が連携して自殺未遂者支援を行っていくために、同一医療圏域にある医療機関と自治体のマッチングを実現しネットワークを構築することが目的です。
事前にJSCPが医療機関側に対し本研修への参加を希望するかの意向を確認し、参加を希望した医療機関が属する医療圏域にある自治体にお声がけをしました。
24病院とその二次医療圏域の自治体から、医師、精神保健福祉士、保健師、心理師など合わせて100名以上にご参加いただきました。(式次第はこちら


「救急患者精神科継続支援料算定医療機関」とは、自殺企図もしくは自傷等により救急搬送されてきた精神疾患を抱える患者に対し、症状悪化の背景にある生活上の課題解決のための援助や、退院後も地域で継続して精神疾患の治療を受けられるようにするための助言・指導等を行った際に、診療報酬(救急患者精神科継続支援料)が算定される医療機関のことです。
JSCPとしては、こうした医療機関と自治体が連携して自殺未遂者支援に取り組むことで、患者の方が退院後も継続的に支援を受けられ、地域での孤立が解消し、自殺の再企図を予防できるようにすることを目指しています。

 研修ではまず、JSCP代表理事の清水康之が「自殺未遂者支援は、令和410月に見直された自殺総合対策大綱でも引き続き重点施策に位置付けられ、令和4年度の診療報酬改定で救急患者精神科継続支援料が大幅に増点されるなど、まさに国を挙げて推し進めていこうという状況にある。しかし、まだあまり広がりを見せていないのが現状だ。そうした中で、現場で支援に当たる、あるいは当たる可能性のある皆さんが、どういう枠組みや条件があれば支援に当たれるか、または一層踏み込んだ支援ができるか、本日の研修を通じてぜひ皆さんの声も聞かせてほしい。この研修を双方向で進めることで、自殺未遂者支援の基盤を強化するきっかけにしたい」と挨拶しました。

【画像】清水さん_レタッチ済み.png

開会の挨拶をするJSCP代表理事の清水康之

 続いて、医療機関と自治体が連携して先進的な取り組みを行っている病院及び自治体として、国立病院機構熊本医療センターと熊本市の担当者にご登壇いただきました。

国立病院機構熊本医療センターの精神科部長及び救命救急・集中治療部副部長の橋本聡氏、同センター地域連携支援室の精神保健福祉士・服部耀氏が、同センターが取り組む自殺未遂者への危機介入の流れや、熊本市こころの健康センターとの連携実績などについて講演しました。

熊本市こころの健康センターの技術主幹兼相談支援班主査である保健師・馬本春美氏からは「自治体と医療機関との連携による自殺未遂者支援事業」と題し、熊本医療センターと連携して実際に対応に当たったケースの具体例を交えた説明や、実践の中で見えてきた課題について報告がありました。

【画像】熊本医療センター・熊本市の講演(左から服部氏、橋本氏、馬本氏)_レタッチ済み.png

左から、熊本医療センターの服部耀氏、橋本聡氏、熊本市の馬本春美氏

JSCPからは、自殺未遂者支援室長の大内衆衛が「自殺の現状と自殺総合対策大綱、救急患者精神科継続支援及びレジストリについて」、地域支援室長で元自治体保健師の与儀恵子が「高度救命救急医療機関と自治体との連携による自殺未遂者支援~現場経験を基に~」と題し、それぞれ説明しました。

 

グループディスカッションでは、自殺未遂者の再企図を防いで生きる支援に繋げるために、救命救急医療機関と自治体との顔の見える関係構築を目指し、連携に向けたスタートラインに立てるよう、同一医療圏域の病院と自治体の担当者が顔を合わせられるようにグループ分けを行い、活発な意見交換が行われました。

 

事後アンケートでは、「今後の取り組みの参考になりましたか」という問いに対し、98%が「大変参考になった」「参考になった」と回答しました。主な意見として、医療機関からは「自治体と連携する際にせよ、どこの誰に連絡すればよいか分からない状況であり、双方の支援体制の整備が重要である」「これまでは医療機関内で支援を完結していたが、自治体の担当者が分かれば、繋ぐことができる」といった意見がありました。
自治体からは、「医療機関へのアプローチを自治体側からも始めたい」「医療機関と自治体の担当者が一緒に学べる今回のような研修を、また開催してほしい」などの意見がありました。

 

研修後には、参加した医療機関と自治体から、連携やネットワーク構築などに関する具体的な相談がJSCPに寄せられています。JSCPは、自殺未遂者支援事業が全国各地で展開されるよう、今後も関係者への支援や研修を開催してまいります。