研修・会議

令和4年度 自殺未遂者ケア研修「第1回 一般救急版」を開催しました

2022年10月 3日

JSCPは令和4年8月21日(日)、令和4年度 自殺未遂者ケア研修「第1回 一般救急版」をオンラインで開催し、約60名が参加しました。救急医療に従事する医師、看護師、精神保健福祉士、救急救命士、救急隊員、その他地域救急医療や地域精神保健福祉に関わる方を対象とし、臨床現場で役立つ自殺未遂者ケアのポイントを体系的に学び、多職種でのワークショップを通じてケアのあり方を実践的に習得していただくことを目的とした研修です。例年定員を上回るお申し込みをいただいていることから、今年度は開催回数を従来の年1回から2回に増やしました。本研修は日本臨床救急医学会、日本精神科救急学会が共催団体となっています。
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研修会ではまず、本研修を主催するJSCPの代表理事である清水康之が挨拶し、自殺の現状について「我が国の自殺者数は、かつて年間3万人を超える状況が続いていたが、2010年以降は減少傾向にあり、ここ数年は2万1000人前後という状況になっている。ただ、減少傾向と言っても、あくまでも年間ベースの話であり、本質的な意味では自殺者数は減ることはない。要するに自殺者数は累積で増え続けている。未だに1日50人~60人の方が自殺で亡くなっており、その10倍、20倍もの人が自殺未遂者となっている。一人でも多くの人が自殺ではなく、生きる道を選ぶことができる状況を作っていかなければならない」と述べました。


また午前の「講義1」では、札幌医科大学医学部神経精神医学講座・主任教授の河西千秋氏が「自殺未遂者支援・ケアに関する施策と医療の動向」と題して講演し、「自殺問題の推移と現状」「自殺と自殺未遂」「自殺未遂者医療」などについて解説しました。

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河西千秋 札幌医科大学医学部神経精神医学講座・主任教授


続いて「講義2」では、帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・教授の三宅康史氏が「一般救急医療における自殺未遂者への対応~基本的な理解と多職種による支援・つなぎ~」と題して講演し、「PEEC」「救急と精神科の連携の問題点」「救急医療における自殺企図者へのプライマリ・ケアの必要性」「自殺企図者のレジストリ」などについて話しました。

三宅先生.png三宅康史 帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長・教授



「講義3」では、福岡大学病院精神神経科精神保健福祉士の松尾真裕子氏が「自死遺族への対応と支援」と題して講演し、「自死遺族の状況」「自死遺族支援の必要性」「悲嘆のケア」「救急医療と自死遺族支援」などについて説明しました。

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松尾真裕子 福岡大学病院精神神経科・精神保健福祉士



「講義4」では、岩手医科大学医学部神経精神科学講座・教授の大塚耕太郎氏が「自殺未遂者ケア・ガイドライン」と題し、「自殺未遂者ケアの国家的施策の展開」「自殺の危険性のある患者への対応」「退院時までに行うこと」「家族への対応」などについて講義しました。

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大塚耕太郎 岩手医科大学医学部神経精神科学講座・教授



続く「講義5」では、河西氏が「エビデンスに基づく自殺未遂者医療:診療報酬項目“救急患者精神科継続支援料”」と題して講演し、「自殺対策のための戦略研究・ACTION-J」について、「試験介入群では通常介入群と比較して自殺再企図発生を6カ月後の時点で50%抑止した」と報告しました。またACTION-Jのインパクトが救急患者精神科継続支援料という診療報酬に反映されたこと、加えて札幌医科大学でのACTION-Jの導入と実践、その後の状況についても説明しました。


午後は、大塚氏による司会のもと、参加者が8グループに分かれて多職種でのワークショップを行いました。自殺未遂者ケアに携わる各分野の専門家がファシリテーターを務め、うつ病の中年男性および自殺行動を繰り返している若年女性の2症例について、一般救急での精神科的見立て、情報収集の方法、自殺企図の危険因子、再企図のリスク、介入を拒否している患者への対応、家族に対してのケア、その後の支援における連携先等について、対応のポイントを学び、参加者間で活発な意見交換が行われました。


今後もより充実した内容の研修を行うべく、研修の企画運営に携わる方々と議論を続けてまいります。自殺未遂者ケア研修「第2回 一般救急版」は、冬頃に開催予定です。