職員紹介

【職員インタビュー】地域連携推進部 地域支援室長・松田芳明:37年の教職経験を活かし、学校と自殺対策部署との円滑な連携を築く

2025年5月 1日

photo-250425-1 - コピー.jpgのサムネイル画像

<プロフィール>松田 芳明(まつだ よしあき)

1962年、東京都生まれ(両親のルーツは山形県鶴岡市)。教員養成系大学を卒業後、東京都で中学校の数学教員となり、37年勤務。その間、3つの区の教育委員会で指導主事、統括指導主事、指導室長を務めるとともに、学校の管理職としても勤務した。2022年に教育職を退職した後、学校と自殺対策部署との円滑な連携を築こうとJSCPに入職。JSCPの業務の他、地方創生にかかる別の仕事(人口減少により、地方で高校の統廃合が進む中、全国から生徒の募集を行う高校が増えてきている。その生徒募集や学校選択を支援する仕事)にもかかわっている。

地域連携推進部とは
住民のいのちと暮らしを守る現場である自治体において、自殺総合対策大綱やこどもの自殺対策緊急強化プランなどを踏まえつつ、自殺対策の取り組みが効果的かつ効率的に進むよう、JSCPの各部署や関係各省庁等と連携しながら、自治体への支援を行っています。

JSCPが地域への支援を行う際に直接的なパートナーとなるのが、全国の都道府県・政令指定都市に設置されている、地域自殺対策推進センターです。自殺対策のエリアマネージャーとしての役割を担う同センターへの支援を通じて、各地域における自殺対策の推進へとつなげていくことで、誰がどこに住んでいても必要な時に必要な支援を受けられる、自殺に追い込まれることのない地域づくりの推進を目指しています。

──地域支援室長の基本的な仕事の内容について教えてください。

fig-250501.png松田)JSCPが地域への支援を実施する際、都道府県と政令指定都市に設置されている地域自殺対策推進センターとの窓口としての役割を担っています。

全国を5つのブロックに分けた上で、各ブロックに「自治体コンシェルジュ」という相談窓口を常設しています。この窓口宛に寄せられたご意見やお問い合わせには、各ブロックに配置されている地域支援室長が対応します。2024年度は、全ブロックで年間2000件程度の問い合わせがありました。

また、地域連携推進部では、自殺対策の部署に初めて着任する自治体職員の方を対象とした「初任者研修」のほか、事業企画の立案や支援技術の理解に役立ててもらうことを目的とした「生きることの包括的支援のための基礎研修」や、地域支援や実務上の具体的な課題に対応できるようになることを目指す「中・上級者研修」などの各種研修会に加えて、個別の事業にかかわる説明会等も実施しています。研修や説明会の運営は、地域支援室長が分担して講師を務めたり、研修動画を作成したりします。

 近年、こどもや若者の自殺者数の増加が深刻な問題となっています。その対応として全国の都道府県及び政令指定都市に、「こども・若者の自殺危機対応チーム」を設置する国の事業が2023年度に始まりました。各自治体が事業を開始するにあたり、担当者とのオンライン会議や、実際に現地を訪問しての打ち合わせを行いながら、自治体を支援しています。


──普段は、どのように働いていますか?

松田)私は、週30時間程度で勤務をしています。勤務の時間もフレックスタイムが導入され自由度も高く、状況に応じてリモート勤務も認められています。地方への出張は、2024年度は平均すると毎月1回以上あり(併任の「こども・若者自殺対策室」の業務も含む)、いろいろな自治体の方々とご一緒させていただく機会があります。1年を通じて業務は続きますが、夏季と年度末が比較的業務量が減るように感じています。

地域支援室長は、東京在住者ばかりではありません。今は、オンライン会議やチャットアプリを活用しての情報交換等が可能です。毎週の部会やチャットアプリで、それぞれの自治体の課題や国の施策の推進上の課題を共有しながら、個々の担当業務を進めています。

photo-250425-7.jpg

──地域支援室長として、基本業務に加え、主に学校連携推進に関わる業務を担当していますね。どんな業務か教えてください。

松田)元々、教員として37年間勤務し、その間には教育委員会事務局で勤務したり、学校で管理職をしたりしていましたので、その経験を活かした支援を行っています。

時々、自治体の自殺対策担当部署の皆さんから、「教育委員会や学校との連携が上手くいかない」との声が届きます。教育委員会事務局には、教員が指導主事として配置され、学校教育行政の中心的な役割を担っています。教員の感覚や考え方、労働環境など、役所の方々には分かりにくいことも多いと思います。そこで、自殺対策の部署の方々と学校・教育委員会との文化の違いを埋めるために、ちょっとした助言をするのが私の役割であると思っています。

かつて勤務した学校では、希死念慮をもつ生徒や、オーバードーズ(過量服薬)やリストカットをした生徒の対応もしてきました。その際、学校の外部の機関とどのように連携するかについて、教育委員会の指導主事として、学校の管理職として、両方の立場や視点から取り組んできました。立場が変われば、見方や考え方も違うこともよく分かっています。ですので、「こども・若者の自殺危機対応チーム事業」においても、対応のポイントについて、経験に則ってお話をさせていただいています。

自分がこれまでの経験を通して考えてきたことや感じてきたことを、研修会や自治体への提案などに反映し、自殺対策が動いていくのを実感できた時、この仕事に特にやりがいを感じます。


──併任している「こども・若者自殺対策室」では、どんな仕事をしていますか?

松田)私は、自殺総合対策部こども・若者自殺対策室の職務も併任しています。担当している主な業務は、教職員向けのゲートキーパー研修を実施するなど、学校や教育委員会にかかわるものです。基本的には、都道府県及び政令指定都市からの依頼で研修を行いますが、全国のモデルとなる取り組みについては私学や一部の市町村、学校からの依頼でも、研修会を行うことがあります。2024年度は、計10回くらい研修会を行いました。


──自殺対策への思いを、聞かせてください

松田)希死念慮をもつ方たちを支援する施策は、もちろん大切です。しかしそれだけでは、自殺者数は減ったとしても、0(ゼロ)にはならないと思います。日本全体が「生き心地の良い社会」を築くことができるように変わっていかないと、上手くいかないと考えています。それにはきっと小さなことのたくさんの積み重ねと、社会全体のマインドの変化が必要だと思います。

例えば、同じような経験をした場合に、自殺で亡くなるこどももいれば、亡くならないこどももいます。こども・若者の成長過程において、その違いを生むものは何なのでしょうか。

私にはこうしたことを明らかにする研究はできませんが、JSCPの研究者(分析官)たちに、たくさんの正確な情報が集まれば、一定の仮説を打ち立てることが出来るのではないかと期待をしています。私の職務は、その成果を、教育委員会や学校等が実践していけるよう支援することであると考えています。

■職員インタビューのバックナンバーは、こちら

■JSCPでは、地域支援室長を募集しています。採用情報は、こちら