調査・研究等

【掲載報告】プレティーン(8~12歳)の自殺状況に関する研究論文を発表

2025年1月23日

JSCPの研究グループによる日本のプレティーン(8~12歳)の自殺状況に関する調査研究論文(“Characteristics of Preteen Suicide in Japan”)が、米国の医学雑誌「JAMA Network Open」(2025年1月22日 :米国東部標準時)に掲載されました。論文では、2009年から2023年までの期間に、この年代のこどもの自殺が増加しており、特に12歳の自殺死亡率が高いこと、女子の増加傾向がより顕著であること、時期としては4~6月が有意に増加したことなどを明らかにしています。

この分析は、米国からの同様の報告(JAMA Netw Open. 2024;7(7):e2424664)を参考に、警察庁の自殺統計のデータを基に行ったもので、分析対象期間における、日本の8~12歳のこどもの自殺死亡者数は283人でした。対象期間の前期(2009~2015年)と後期(2016~2023年)の自殺死亡率を比べると、後期に42%の増加が見られ、特に女子は98%増と顕著に示されています。四半期別の比較では、7~9月がもっとも自殺死亡率が高く、この傾向は対象期間の前期と後期にかかわらず一貫していました。一方で4~6月は、前期に比べて後期に93%増加しています。
この結果は、児童を含むこどもの自殺の実態解明や自殺対策の強化が急務であることを再認識させるものといえます。

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〈研究グループからのコメント〉

今回対象とした「8~12歳」は、一部の12歳のこどもを除いて概ね小学生に相当しますが、中学生・高校生でも類似の状況が観察されています(厚生労働省『令和6年版自殺対策白書』)。一方で、なぜ小学生を含むこどもの自殺が増えているのか、なぜ女子において顕著であるのか、などといったことについては、明らかになっていません。その他、地域や時期ごとの変化の違いなどが何を意味しているのかも、分かりません。
これらの答えに迫るには、様々なデータを多角的に分析することが必要です。現在、JSCPでは、こども家庭庁からの補助を受けて「令和6年度こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究事業」を実施し、学校や教育委員会等が保有する自殺に関する統計及びその関連資料を含めた分析を進めています。このような実態解明とあわせて、自殺予防に資する教育等の推進や、自殺リスクの早期発見・適切な対応といったこどもの自殺対策を推進することもますます重要となっています。

■論文はこちら(JAMA Network Open 内)に掲載されています