成果の公表(「自殺対策推進レアール」他)
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子どもの抑うつに対する遠隔メンタルヘルスケアの社会実装と早期受療システム整備 ─ KOKOROBOと子どもの精神疾患レジストリ連携
令和7年度自殺対策推進レアール〈研究成果報告〉①
子どもの抑うつに対する遠隔メンタルヘルスケアの社会実装と早期受療システム整備 ─ KOKOROBOと子どもの精神疾患レジストリ連携
遠隔メンタルヘルスケアシステムを社会実装
2025年に開催した自殺対策推進レアールでは、「領域1:子ども・若者に対する自殺対策」「領域2:自殺ハイリスク群の実態分析とアプローチ」「領域3:ビッグデータ・AI等を活用した自殺対策」の3つの領域において、2022~2024年度の3か年にわたって取り組まれてきた11の研究課題に関する成果が報告されました。今回は領域1(子ども・若者に対する自殺対策)の研究課題(R4-1-5)「子どもの抑うつに対する遠隔メンタルヘルスケアの社会実装と早期受療システム整備-KOKOROBOと子どもの精神疾患レジストリ連携」についての成果報告の概要をご紹介します。
同研究の研究代表者は千葉大学医学部准教授の佐々木剛さんです。佐々木さんは領域1のプログラムディレクターも務めています。
領域1では、近年、喫緊の課題になっているこども・若者の自殺について、その実態の解明や対策(予防)に資する研究が行われました。「子どもの抑うつに対する遠隔メンタルヘルスケアの社会実装と早期受療システム整備-KOKOROBOと子どもの精神疾患レジストリ連携」をテーマとする本研究の目的は、「子どもの精神疾患レジストリ」(*)の大規模なデータを収集し、客観的で多面的な評価を行い、児童・思春期精神疾患の状態像や治療の効果などを正確に見極めて自殺予防を推進することです。
また、遠隔のメンタルヘルスケアシステム(「KOKOROBO」)などを用いて、抑うつ状態のこどもの精神医学的評価と初期対応をした上で、精神科医や児童精神科医へ早期につなげるシステムを構築することが、病状改善や自殺予防に寄与するのかを明らかにすることを目指しています。
具体的な取り組みとして、すでに国立精神・神経医療研究センターと共同開発・実践してきた「KOKOROBO」や精神疾患レジストリを児童・思春期向けに展開し、小児科・精神科・児童精神科や地域医療機関、行政などとも連携しながら社会実装を進めました。
自殺対策推進レアールで研究成果を報告した、研究代表者の佐々木さんは、「精神保健が自殺対策にかかわることはとても多い。1次予防(疾病の発生を未然に防止)、2次予防(疾病の早期発見と治療)、3次予防(発病した疾病の増悪防止とリハビリ)でどうすればいいか。社会実装につながることを一つひとつ対応してきた」と話し、所属する千葉大学医学部附属病院での科を超えた診療や教育面での連携、県の地域医療連携計画に基づく地域医療機関や行政機関との連携などについて説明しました。
後者はCHIBA TAIYO Project (Treatment Access Intervention for the YOung)と名付けられ、以下のような連携や臨床研究を進めています。
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- 大学病院に救急搬送された自殺企図児童全例の迅速な精神医学的評価・対応と、多職種による児童虐待対応チーム(FAST: Family Support Team)の多面的評価による地域・行政連携
- FASTではハイリスク妊産婦にも対応。県児童虐待防止ネットワーク事業会議にも参加
- 児童相談所、非常勤医師、教育機関への派遣による相談。災害時のDPAT、DMATとの連携
- 県障害福祉課/児童家庭課とともに、精神科医療領域の社会実装整備・人事連携を推進
- 大学病院の精神神経科・こどものこころ診療部医局員は成人・児童の精神科患者を分け隔てなく診療し、各外勤先(医療機関等)でも継続
オンライン相談から医療の早期受診につなげる
「KOKOROBO (ココロボ)」は、国立精神・神経医療研究センターが開発した、メンタル不調の予防と不調のある方への早期手当、さらに必要な方に医療への橋渡しを行う、オンラインによるメンタルヘルスケアシステムです(https://www.kokorobo.jp/)。本研究では、「KOKOROBO」の研究開発者と協働し、2023年に千葉市、24年に銚子市で社会実装するとともに、こどもが使用しやすい方法などを検討しました。
「KOKOROBO」は利用者がウェブにアクセスしセルフチェックすると、AIが解析評価して、認知行動療法を活用した「こころコンディショナー」というアプリ(チャットボット)やSNS ・オンライン相談を紹介する仕組みです。オンライン相談は臨床心理士などが担い、医療が必要だと判断すれば、連携する医療機関につなぎます。そのため自治体での社会実装(オンライン相談)には、医療機関との連携が求められます。
質疑で、生成AIとの違いを聞かれた佐々木さんは、「KOKOROBOの何よりの強みは、評価結果やチャットから臨床心理士への相談、さらに医師へと実際の支援につながること。ある意味でトリアージのシステムといえる。逆に自治体が導入する場合には、支援する医療機関の確保が最大の課題になる。評価されてもユーザーの行き場がなければ不十分。千葉県では以前から国立精神・神経医療研究センターと連携していたので、千葉市でも銚子市でも早期に受診できるシステムをつくることができた。今後の課題は受診することに抵抗がある人にどう対応していくか」と説明しました。
行政機関のデータをレジストリに
このほかにも、千葉大学では、こどもと保護者に届きやすいよう漫画仕立てでうつと自殺対策の啓発コンテンツを作成しSNSで発信したり、県教育委員会や県立高校と連携したこどものストレスチェック事業を実施するなど多彩な取り組みを展開。ストレスチェック事業では、オンラインで学校の教員と精神科医が相談できるシステムを構築し、県立高校の半数からコンサルトの要請がありました。
佐々木さんは、「こどもの自殺対策はこどもだけでなく、その周囲の人たちや、周辺で起きている出来事に広くアプローチしなければ難しい」と話し、「レジストリはまだまだデータを集めている段階。たくさん集めてエビデンスを構築しなくては自殺対策につながらない」と強調。特に行政の客観的なデータがまだ少ないと言い、「個人情報の問題でデータの抽出が難しいと断られることが多く、それぞれの行政機関が具体的にどのような人にどのような介入をしてどうなったかというデータが乏しい。そうしたデータがレジストリにつながっていけば、行政としても根拠のある対応ができるはずなので、ぜひお願いしたい」「自殺対策の主人公は今日来てくれているみなさん。現場の声から研究や対応のヒントをいただきたいので教えてほしい」と参加者に呼びかけました。
■本研究の最終報告書はこちらからご覧ください
* レジストリは、特定の疾患や健康状態などについて、医療情報や健康情報を収集するデータベース。「子どもの精神疾患レジストリ」の基本情報は、年齢、人種、身長・体重、精神科診断、併存疾患、既往歴、アレルギー、精神科家族歴、兄弟姉妹の有無、両親の婚姻状況、喫煙歴、飲酒歴、物質乱用・依存歴、行動嗜癖、在籍する教育機関、就学状況、居住状況、被虐待歴、人間関係の問題、他者への暴力問題、自傷、自殺企図、クロザピン治療歴、mECT歴、療育手帳の有無、心理社会的介入状況、障害福祉サービス利用状況、精神科入院歴、現在の処方、服薬状況、治療状況。






