研修・会議
【開催レポート】令和6年度「自死遺族等支援団体向け研修・意見交換会」
2025年3月 7日
JSCPは2025年2月1日、自死遺族等支援を行っている民間団体を対象に、令和6年度「自死遺族等支援団体向け研修・意見交換会」をオンラインで開催しました。当日は全国から20団体、25人の方に参加いただきました。この研修は、全国の自死遺族等支援団体が意見交換する場を設け、活動を展開するうえでのヒントにしていただくことを目的に、2022年度より毎年度開催しているものです。
今回は、2024年9月にJSCPが公開した「自死遺族等を支えるために 総合的支援の手引(改訂版)」を踏まえ、「民間団体における自死遺族等支援の課題」としてよく挙げられる「民間団体と地方公共団体の連携」「人材の確保や育成」「効果的な広報活動」の3つのテーマに沿って実施。手引の中で取り組みが紹介されている3つの民間団体の事例紹介や、参加者によるグループディスカッションなどを行いました。
(研修のプログラムはこちら)
1.「自死遺族等を支えるために 総合的支援の手引(改訂版)」作成の経緯と内容の説明
研修ではまず「JSCPからの情報提供」として、自死遺族等支援室長の菅沼舞が、手引を改訂した経緯や改訂版の概要を以下のように説明しました。(説明資料はこちら)
2022年10月に閣議決定された第4次自殺総合対策大綱では、2018年11月に発行された旧手引の活用や必要な見直し、情報の整理と提供を行うことが盛り込まれました。今回の改訂はそれを踏まえたもので、改訂版の作成に際しては、自死遺族等支援に関して高い知見を有する専門家や支援者による有識者会議を設置し議論いただくとともに、昨年度開催した意見交換会の中で出された意見なども参考にしています。
※菅沼の講義については、YouTubeで一般公開しています(約16分)。(動画はこちら)
2.事例掲載団体からの事例紹介
続いて、手引の中で事例を掲載している3団体の担当者から、研修のテーマである「民間団体と地方公共団体の連携」「人材の確保や育成」「効果的な広報活動」について、各団体の具体的な活動を説明いただきました。(説明資料はこちら)
【千の風の会(岐阜県自死遺族の会)】
〈民間団体と地方公共団体の連携〉
2008年に発足し、発足時から岐阜県精神保健福祉センター(以下、センター)と一緒に活動を行っている「千の風の会(岐阜県自死遺族の会)」(以下、千の風の会)からは、地方公共団体と連携する際の工夫について、以下のように報告がありました。
「岐阜県で、奇数月に開催しているわかち合いの会では、会の運営は千の風の会のスタッフが行っていますが、センター職員の方も毎月必ず臨席しています。報告書などの文字で伝わる情報ではなく、実際にご遺族の生の声を聞いて、状況や気持ちの流れなどを感じ取ってもらうことは重要だと感じています。
毎月1回開催している「サポートスペースれんげ草」では、初めてわかち合いの会に参加するご遺族に対して、センターの保健師と自死遺族当事者であるスタッフが一緒に、ご遺族の話を聞いたり、千の風の会の趣旨などを丁寧に説明したりする場を設けています。
民間団体と地方公共団体の連携において大切にしているのは、立場は違っていても自死遺族等支援を実践していくのは同じなので、互いの意見を交換しながら事業を進めていくということです。ズレや矛盾が生じた際は、そこで線引きをしてしまうのではなく、それらの課題をどうすれば次につなげられるかを模索しながら、実践に活かしています。」
【リメンバー福岡 自死遺族の集い】
〈人材の確保や育成〉
2004年に発足し、福岡市精神保健福祉センターと連携しながら会の運営を行っている「リメンバー福岡」からは、人材の確保や育成において大切にしていることを以下のように紹介いただきました。
「私たちが人材の確保や育成において大切にしているのは大きく3つです。1つ目は、『スタッフである前に、一人の自死遺族であることを尊重する』です。スタッフにとっても安心して取り組める環境を作るために、運営スタッフ同士のわかち合いの場を設けたり、集いの前と後にミーティングを開いたりして、心の重荷を残さないように気をつけています。 2つ目は、『継続して参加している方への声がけ』です。設立の初期には、講演会や研修会などのイベントを企画し、参加者の方にもそれぞれの役割を振ることで自分たちのグループであるという意識づけを行ってきました。3つ目は、『会の雰囲気を守る』です。一度に複数のスタッフの方を入れるのではなく、丁寧に会の雰囲気をつないでいくことを大切にしています。資格の所持や研修等の受講を課すのではなく、約束ごとをきちんと説明し、参加者の延長線上で会に関わることができることを大切にしています。」
【NPO法人全国自死遺族総合支援センター】
〈効果的な広報活動〉
2008年に発足し、全国の自死遺族等を対象に電話やメールによる相談のほか、わかち合いの会の運営や地方公共団体への運営協力などを行っているNPO法人「全国自死遺族総合支援センター」(以下、センター)からは、広報活動において工夫していることを説明いただきました。
「現在は、ご遺族のほとんどの方が、インターネットを通じて相談窓口などの情報を取得されることが多いため、センターとしてもホームページに力を入れています。定期的に開催されており、責任者がいること、また何かの際の連絡が取れることを条件に、全国各地で開催されているわかち合いの会の情報なども集約し、開催場所や開催時期を絞ってご遺族が検索できるようなサイトもホームページ内に構築しました。また、SNSでセンターの公式アカウントを使って定期的に情報を発信したり、地方公共団体の公式アカウントでも情報を発信したりしています。チラシに関しては、開催情報のほかに過去に参加した方の感想をメッセージとして掲載したり、地方公共団体と一緒に作成したチラシを各地のわかち合いの会などでも配布したりしています。広報活動では、ホームページの作成やSNSの発信などが得意なスタッフが団体の中にいるかどうかも大切になってきていると感じています。」
3 グループディスカッション「地方公共団体が行う自死遺族等支援において留意したいこと、改訂版の手引の活用法について」
研修の後半は、「自死遺族等支援の活動における課題について」をテーマに、「民間団体と地方公共団体の連携」「自死遺族等支援に関わる人材の確保や育成」「効果的な広報活動」の3つのグループに分かれて、参加者同士でグループディスカッションを行いました。そのなかで挙がってきた意見などをご紹介します。
〈民間団体と地方公共団体の連携〉
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- 民間団体と地方公共団体の連携については、実際に、地方公共団体の補助金を活用したり、公共的な団体と連携している団体もある一方、会場や資金面の確保を課題と感じている団体もある。
- 広報活動では、自分たちだけの力では限界があるため、今後、地域の地方公共団体と連携したいと考えている。
- 今回の意見交換会で、全国各地の団体やその活動を知るとともに、取組内容などの情報交換を通して、活動の継続に向けたヒントを得ることができたと感じる。
〈自死遺族等支援に関わる人材の確保や育成〉
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- 遺族支援活動では、参加者がいなくても場を開き続けることが大切であるが、そのためには人材が必要であり、人材の確保や育成をするためにも費用がかかるので、そういった面でも地方公共団体との連携が必要不可欠だと感じている。
- 人材の確保については、継続して会に参加している方に、運営側としてかかわる意思がないかを確認することが効果的だとわかった。声がけのタイミングが難しい部分もあるが、実践していきたい。
- 海外のようにスタッフが専門家になるための資格取得等の後押しができる仕組みが欲しいと思っている。
〈効果的な広報活動〉
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広報活動では、多くの参加者がホームページを利用しているという話があったが、ホームページの運用にあたっては、2ステップくらいで必要な情報にアクセスできるようなつながりやすさの工夫が必要ではないかと感じている。
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こどもたちへの周知に関しては、教育委員会を通じたリーフレット等の配布なども効果的だと思う。
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JSCPでは、今後も定期的に自死遺族等支援団体などの民間団体を対象に、研修・意見交換会を継続して実施していく予定です。
研修・意見交換会の参加者の皆さんと、JSCP関係者の集合写真
※参加者の許可を得て撮影・掲載しています
※「自死遺族等を支えるために 総合的支援の手引(改訂版)」は、以下からダウンロードが可能です。
https://jscp.or.jp/izoku_support/handbook2024.html
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