研修・会議
令和4年度 自殺未遂者ケア研修「第2回 精神科救急版」を開催しました
2023年1月11日
JSCPは令和4年12月18日(日)、令和4年度 自殺未遂者ケア研修「第2回 精神科救急版」をオンラインで開催しました。精神保健福祉に従事する医師、看護師、精神保健福祉士等を対象とし、「初期対応から継続的な支援まで、臨床現場で役立つ自殺未遂者ケアのポイントを、日本精神科救急学会が作成したガイドラインに沿って体系的に学んでいただくとともに、モデル症例を用いた多職種でのワークショップを通じてケアのあり方を実践的に習得していただく」ことが研修の目的です。
本研修は、定員60名のところ例年定員を大きく上回る申し込みをいただいていることから、令和4年度は開催回数を従来の年1回から2回に増やしました。2回目の今回も、約60名にご参加いただきました。本研修は日本精神科救急学会、日本臨床救急医学会が共催団体となっています。(プログラムはこちら)
研修会ではまず、JSCP代表理事の清水康之が「本年11月までの累積自殺者数は対前年比2.4%増となっており、年間自殺者数が本年も2万人を超えることは避けられそうにない。近年、2万人台の前半で推移する状況が続いており、我が国の自殺対策を更に推し進めていくには自殺未遂者支援の更なる強化が不可欠だ」などと挨拶しました。
清水康之
続いて日本精神科救急学会・理事長、公益財団法人復康会沼津中央病院・院長の杉山直也氏が「最近の自殺の様相はコロナ禍以降異なってきており、学会ではそうした動きをしっかり研修に反映するようにしている」「精神科救急というサービスが期待される役割は非常に大きい」などと述べました。
杉山直也氏
午前の講義では、一般社団法人日本うつ病センター六番町メンタルクリニック・院長、帝京大学医学部附属溝口病院精神科・客員教授の張賢徳氏が「自殺行動の精神医学的理解と対応」と題して講演し、「日本は自殺者が激増する国だということを知っておかなければならない」など話しました。また、杉山氏が「自殺未遂者対応ガイドライン」について講演し、自殺未遂者ケアについてガイドラインに沿って詳細に解説しました。
張賢徳氏
午後は、岩手医科大学医学部神経精神科学講座・教授の大塚耕太郎氏および横浜市立大学医学部精神医学教室・講師の須田顕氏の司会のもと、参加者が8グループに分かれて多職種でのワークショップを行いました。自殺未遂者ケアに携わる各分野の専門家がファシリテーターを務め、児童・生徒および摂食障害の2症例について、精神科救急でのトリアージから初期対応と治療方針の決定、そしてケースマネジメントの各段階における対応のポイントを学び、活発な意見交換がなされました。
大塚耕太郎氏
須田顕氏
午後の講義では、JSCP自殺未遂者支援室長の大内衆衛が「法等の整備と自殺未遂者等への取り組み」と題し、「日本全国の一般急性期病院に自傷、自殺未遂のために入院した患者を対象とした研究において、急性期病院の半数で精神科的な院内体制が整っておらず、自宅へ退院した患者のうちの半数が精神医学的な介入を受けていなかったことがわかっている」「自殺未遂者が自殺の最大のリスクを抱えた人であるにも関わらず、みすみす自殺の再企図をさせてしまっていることになる」と話をしました。
大内衆衛
最後にワークショップの成果発表とディスカッションが行われました。コメンテーターの医療法人学而会木村病院・顧問、千葉県精神科医療センター・名誉病院長、静岡県立こころの医療センター・名誉院長、平田豊明氏は「救急に制限は色々あるが、(自殺未遂者ケアは)ある意味治療的介入、治療的導入へのチャンスでもある」などと指摘しました。また、医療法人コミュノテ風と虹のぞえ総合心療病院・理事長/院長の堀川公平氏は児童・生徒の治療について、「自然な形でどう理解するか、そしてその理解を伝えることで、患者さんから『自分のことを理解してくれる大人・先生もいるんだな、精神科ってすごいなあ』と思ってもらえることが治療の礎になるのではないか」などとコメントしました。最後に医療法人稲門会いわくら病院の川畑俊貴氏は、児童・生徒のケースで家庭が問題を抱えている場合、「家庭内で起こっていることをまずは本人にしっかり説明してあげる。そうしたすごく当たり前のことを、周り(治療者ら)が促進してあげることが大事だ」などと述べました。
平田豊明氏
堀川公平氏
川畑俊貴氏
今後も、参加者にとってより充実した内容の研修を行うべく、プログラムや研修内容をブラッシュアップしてまいります。令和4年度の本研修「精神科救急版」は今回が最後ですが、来年度も開催を予定しております。
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