JSCPとは

設立趣旨Background

いのち支える自殺対策推進センターは、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指すため、自殺対策を「生きることの包括的な支援」として推進し、そのために必要なあらゆる関係者との協働を模索しつつ、常に自殺対策の現場を意識しながら「当事者」や「支援者」との対話を繰り返し、自らも果敢に「先進的なモデル」作りに挑みながら、同時に、効果的かつ効率的に事業を推進するための研究や検証を強化することなどを通じて、「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律(令和元年法律第三十二号)」 が定める指定調査研究等法人として、我が国の自殺総合対策の牽引役を務める決意です。

代表理事挨拶Representative Director's Comment

誰も自殺に追い込まれることのない「生き心地のよい社会」を創るために

いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)の船出は、これまでの自殺対策の歩みを象徴するかのように波乱万丈なものになりました。というのは、当センターは2020年4月1日に、「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律(令和元年法律第三十二号)」に基づく厚生労働大臣指定法人として発足したのですが、発足したその日(入所式)から、新型コロナ感染症拡大の影響による自殺リスクの高まりを想定した緊急対応に最優先で取り組むことを決めて、何の準備もないままにいきなり大海原の荒波を突き進むことになったのです。

2020年4月2~3日の全体研修は、当初予定していた内容をすべて変更。職員26名を4つのグループに分けて、急きょ、各グループで「新型コロナ感染症の影響による自殺防止策」を検討してもらいました。「はじめまして」の挨拶を終えたと思ったら、早速自殺対策を具体的に立案することになり、職員の間に戸惑いもあったと思います。しかし、当センターの職員は、元自治体職員や民間団体職員、研究者や遺族、現職の医師等、生きることの包括的な支援(自殺対策)の最前線で活動してきた経験を持つ者ばかりです。すぐに、いくつもの具体策が打ち出されました。

そして、始動からこれまで(6月末まで)の3か月間で、具体策をいくつも実現させてきました。例えば、内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策推進室」と協定を結び、協働で社会実装を果たした「支援情報ナビ」です。これは、制度等に関する情報が必要な人には「制度等の支援情報」を提供し、ストレスへの対処法を知る必要がある人には「ストレス対処法に関する情報」を伝え、ストレス度が極めて高い人(自殺リスクを抱えた人)は「直接支援につなげる」という、3段階の支援を途切れさせずに連動して行うことができるWebサイトです。

また、新型コロナ感染症拡大の影響により、自殺防止や自死遺族支援等に取り組む全国の民間団体が活動の制限や休止を余儀なくされている実態を把握するため「緊急調査 」を4月下旬に実施。回答した55団体のうち46団体(83.6%)が活動を制限、休止せざるを得ない深刻な状況や活動再開に向けた課題等を明らかにしました。他にも、5月21日に、全国の自治体職員(自殺対策担当)向けに「オンライン緊急研修会 」を開催し(500超の自治体、600拠点超が参加)、新型コロナ感染症の影響による自殺リスクに備えるためにどういった対策を講ずべきかを伝えたり、これは新型コロナ感染症とは関係ありませんが、若者に人気の番組に出演していた女子プロレスラーが急逝したことによる報道に対して「自殺報道ガイドラインに即した報道 」を行うように即座にメディア各社に申し入れ を行ったりもしてきました。一方で、こうした緊急的な具体策と並行して、「革新的自殺研究推進プログラム 」の内容を検討したり、WHOの「国家自殺対策戦略」の翻訳を行ったりと、中長期的な視野に立った自殺対策にも取り組んできました。

自殺対策基本法の策定時から常に、我が国の自殺対策が「現場本位」で行われてきたように、当センターもこれまでのそうした理念や基本的な方針を引き継いで、「目の前の危機」に即応しつつ、あわせて、「時代や社会の動き」をしっかりと捉えながら、厚生労働大臣指定法人としての責任を果たしていく所存です。一人ひとりが自分自身であることに意味を感じながら人生を全うできる、そんな、誰も自殺に追い込まれることのない「生き心地のよい社会」を創るため、ただひたすらに前進していく決意です。ぜひこのサイトを通じて、皆さまに少しでも当センターのそうした活動等について触れていただければ幸いです。

代表理事清水 康之Yasuyuki Shimizu

略歴

代表理事 清水康之
1997年
NHKに入局
2001年
『クローズアップ現代』で、自殺で親を亡くした子どもたちを一年がかりで取材。「お父さん、死なないで ~親が自殺 遺された子どもたち~」を放送。その後も、NHK報道ディレクターとして、自死遺児や自殺で亡くなった人の遺書、自殺対策等について取材を続けるが、「推進役」のいない日本の自殺対策に限界を感じて、2004年春にNHKを退局。
2004年
NPO法人自殺対策支援センターライフリンクを設立。同代表に就任。
2005年
国会議員会館で自殺対策をテーマにした初のシンポを企画・開催。
2006年
「自殺対策の法制化を求める3万人署名(結果10万人分集まる)」を企画・展開して、「自殺対策基本法」の成立に貢献。
2009年
内閣府特命担当大臣らで作る『自殺対策緊急戦略チーム』メンバーとして内閣府参与に就任(2011年8月まで)。『自殺対策100日プラン』の取りまとめ役を担う。
2016年
自殺対策基本法施行から10年目の節目に、超党派「自殺対策を推進する議員の会」アドバイザーとして、基本法の大改正にも関わる。
2019年
一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターを設立。同代表理事に就任。現在に至る。

組織概要Overview of Organization

2020/9/1時点

厚生労働大臣指定法人としての業務を適正かつ確実に行うため、当センターは、以下5つの点に留意した組織体制を整えています。

  • 地域連携・
    地域支援の強化

    地域自殺対策推進センター(都道府県等)や市区町村との連携を強化し、地域自殺対策計画の策定・実行・進捗管理・検証等に関する実践的な支援を強化すること。

  • 政策形成への貢献

    地域の取組状況の収集、評価等を推進し、新たな政策課題等を踏まえたモデル作りや研究を行うことで、様々な政策提言やEBPMに資する研究成果等を提示すること。

  • 支援技術や
    ツールの開発と改善

    「SNSを活用した相談インフラの構築」や「SOSの出し方に関する教育の推進」 等、時代の変化に応じた支援技術等の開発・改善を、現場と連携しながら進めること。

  • 国際連携の推進

    海外の先進的取組等の調査・研究を通じて我が国の自殺対策の質の向上を図り、我が国の自殺対策を海外に政策輸出することで人道的側面から世界に貢献すること。

  • 管理機能の強化

    様々な分野の多様な関係者と柔軟に連携の枠組みを構築し、国や自治体とも緊密に連携するため、ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底を図ること。

WHO協力センター

JSCPは、2021年1月に「 WHO協力センター(J-99:自殺対策・人材育成)」の認証を受けました。世界的な自殺対策のネットワーク構築および自殺対策に関わる人材の育成を行ってまいります。詳しくはこちら



理事

  • 長野県知事阿部 守一

  • 未遂者.家族を支える会
    くいしんぼカフェ代表
    石倉 紘子

  • 滋賀県立
    精神保健福祉センター所長
    辻本 哲士

  • 京丹後市長、
    自殺のない社会づくり
    市区町村会(幹事自治体首長)
    中山 泰

  • 九州大学大学院
    法学研究院教授
    岡﨑 晴輝

  • NPO法人蜘蛛の糸理事長佐藤 久男

監事

  • 早稲田リーガルコモンズ
    法律事務所 代表弁護士
    河﨑 健一郎

組織図

組織図

5つの活動方針5 Principles of Our Activity

  • 5つの活動方針

    我が国の自殺総合対策における「ハブ(つなぎ役)」の役割を果たす。

  • 5つの活動方針

    「生きることの包括的な支援」として、自殺対策を幅広く総合的に推進する。

  • 5つの活動方針

    あらゆる活動の原点に、「いのち」と「対人支援や地域連携の現場」を据える。

  • 5つの活動方針

    EBPM(エビデンスに基づく政策形成の実践)を推進して自殺総合対策における「PDCAサイクルの牽引役」を担う。

  • 5つの活動方針

    海外に向けて政策輸出を積極的に行い「世界的な自殺対策の推進役」を目指す。

6つの事業項目6 Fields of Our Activity

当センターは「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律」第5条において「指定調査研究等法人の業務」とされている以下の6つの事業を行っていきます。

厚生労働省「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律」第4条第1項の規定による指定について

  1. 自殺の実態、自殺の防止、自殺者の親族(*自死遺族)等の支援の在り方、地域の状況に応じた自殺対策の在り方、自殺対策の実施の状況等又は心の健康の保持増進についての調査研究及び検証を行い、並びにその成果を提供し、及びその成果の活用を促進すること。*当センターの判断で「自死遺族」と加筆

  2. 前号に規定する調査研究及び検証を行う者に対して助成を行うこと。

  3. 自殺対策について、先進的な取組に関する情報その他の情報の収集、整理及び提供を行うこと。

  4. 地域の状況に応じた自殺対策の策定及び実施について、 地方公共団体に対し、助言その他の援助を行うこと。

  5. 自殺対策について、地方公共団体の職員、自殺対策に係る活動を行う民間の団体の職員その他の関係者に対する研修を行うこと。

  6. 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。